混xxxチキ ショートショート劇場 Vol, 1



□□□夕暮れのゲリラ□□□


夕闇の迫る廃工場をアメヒコは逃げていた。

追手をまくため、レンガの壁を曲がった先で植え込みに身を沈めると、トランシーバーを腰から抜き、小声でしかしマシンガンのように言葉を吹き込んだ。
「トビヤマ!こちらアメヒコ。戦況を報告する」
「了解!どうぞ」
「作戦は失敗。ダツとヤマさんがやられた。俺も追われてる。サカキが張ってやがった。」
左手にトランシーバーを持ち替え、右手で腰からマガジンを抜き取るとデザートイーグルの弾を入れ替えた。

「ヤマさんもか・・・ユウキの方は?」
トランシーバーからトビヤマの声が聞こえる。
「分からない。あいつのことだから、無線の電源切っているかもしれない。」
「こっちも攻められてる。なんとかヤツらのボスを獲ってくれ。イチハチマルマルまであと9分だ。」
「了解。」

無線を切ったとほぼ同時に、離れた所で砂利を踏むかすかな足音が聞こえた。
ざっと10~15m位だろうか。
無線の声は届いていないはずの距離だ。気付かれていなければまだチャンスはある。そのまま近づいてくれば、返り討ちにしてやる。

と、その時アメヒコのいる植込みの反対方向に夕日に長く伸びた影がゆらりと現れた。
しまった、回り込まれた。
サカキが仲間を呼んだに違いない。

反射的に植込みから飛び出したアメヒコは、トビヤマのいる6区の第三倉庫へ向かって駆け出した。
バシュ!と植え込み目掛けて数発の弾が打ち込まれ、間一髪でアメヒコはアスファルトを蹴って倉庫街に紛れ込む。

このままでは、仲間と同じ様に袋の鼠にされてしまう。
「トビヤマ!こちらアメヒコ!追われている。第三倉庫へ向かう。」
「了解。俺もそっちへ援護に回る。無事に落ち合おう!」

息を切らせながら手早く連絡を切ると、アメヒコは夕暮れに染まる倉庫街を走った。
追っ手をまく為に全力で駆け抜け、ようやく6区の第三倉庫の赤茶けた屋根が見えてきた。とその時

「そこまでだよ。アメヒコ。」
ゆっくりと倉庫の影から現れたサカキが、アメヒコの前に立ちはだかった。
後ろを振り向くとそこには、サカキ配下の連中が二人、肩で息を切らせながら逃げ道をふさいでいる。
「くそ!」
「トビヤマとか言ったよな?お前の組の仲間。あいつも今頃うちの連中にやられている頃だぜ。」

サカキが話終らないうちにアメヒコが素早くデザートイーグルを構えた瞬間、それより一瞬早くサカキのUZIサブマシンガンがアメヒコに向けて火を吹いた。

アメヒコの体に無数の弾が打ち込まれた。
鈍い痛みが体中を貫き、アメヒコは呻きながらアスファルトに倒れこむ。



と、それとほぼ同時に、サカキの組の陣地からひゅるひゅるとロケット花火が3発打ちあがった。

合図だ。

サカキの組長がアメヒコチームのスナイパーに撃たれたのだろう。ゲリラ部隊の勝利だ。


「ちょっ!!なんだよ、また負けかよ。ユウキのやつだろ。」サカキが悔しそうにつぶやく。

「危ないところで命拾いしたぜ。今のはノーカンな。しかし、お前のサブマシンガン痛えし!卑怯くせぇ。」
立ち上がったアメヒコの洋服からパラパラとBB弾が転がり落ちた。

「それいったらお前らの無線とかユウキのプロスナイパーだって卑怯だよ。」
「あれはエアーガンなの!電動ガンは痛いんだよ~。」
「へへ!コレ高かったんだぜ。」


6時を告げるチャイムが鳴り響き、廃工場の敷地の外から夕飯のにおいがうっすらと漂ってきた。
「それじゃ、また明日。学校でな!。」
子供たちの影法師が夕焼けの中を四方へと散っていった。



戦績 6年3組VS6年1組 3勝1敗1引分。


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