スタンドバイミー

確か僕が11歳の頃上映されていた映画だと思うんだけど、僕の冒険心に火をつけたのがスティーブン・キング原作の[Stand by me]。


僕の通った小学校からは天気の良い日は富士山が見える。
名前も富士見小学校ってくらいで、いつも身近に山を感じながら育った。

そんな富士山とは雲泥の差だけど、曇っていても雨が降っていても必ず窓の向こうに見える山があって、その名もむこう山・・・
羽村には玉川上水があり都内の水道水の源流にもなっている、そんな川原のすぐ目の前にむこう山はちょこんとそびえている。

山頂まで子供の足でも30分位。ゴルフ場が収まっている小さな丘陵で、10歳の頃から僕らの遊び場になっていた。

ツチノコ探し探検隊が結成されれば、そこはジャングルの密林になり、エアーガンが流行れば戦場になり、子供の頃の僕らのメインステージだった。

山に登るには、ふもとの郷土資料館の脇の舗装道路を50m程登る。
するとハイキングコースと称した山道が現れて、そこらへんで遊ぶのが普通なんだけど、トムソーヤーが大好きだった冒険野郎どもは当たり前の道に興味なんて無い。

ハイキングコースに至る前の、舗装道路の脇に大人じゃ絶対気づかないような獣道があって、そこをたどってゆくと急な斜面の上のほうに、崖崩れを防ぐためのダムのように切り立ったコンクリートの壁が現れる。

その壁のすぐ下に二本の木が生えている。
一本はまっすぐ上に伸びているんだけど、2~3m位の高さの所に、もう一本が斜めに倒れ掛かり、お互い支えあった形で太い枝が真横に伸びている。

何時だったか僕の友達と、工事現場から黒と黄色の縞模様になったロープを失敬してきて、その斜めに張り出した木によじ登りしっかりと結びつけた。
垂れ下がったロープの先は輪を作って結び、太い角材をその輪に通して座るところを作ると、あっという間にターザンロープの完成。
コンクリ壁の上から一気にダイブ!!

このターザンがそんじょそこらのターザンとはわけが違う。
ロープを結びつけた位置も既に地上から7mくらいの高さなんだけど、
コンクリ壁の高さも3mくらいあって、登ってそこから見下ろすと、ずっと下のほうまで斜面になっている。
壁から思いっきり飛び出して一番ロープが伸びきった所の高さは地上から10m位はあったんじゃないかな。

周りは山に囲まれて、見下ろす先は生い茂った木々とそのむこうに僕らの住む町と多摩川が見える。
ターザンロープで奇声を張り上げながら、町に向かってダイブするんだけど、初めて飛び出すときは本当に怖いんだ。
高所恐怖症じゃなくてもこれはしり込みしちゃうような遊びをよくやっていた。

あるとき普段は山遊びをしない竹ちゃんって友達を誘って、ターザンに連れて来た事がある。
竹ちゃんは中学に入ってからテニス部でめきめき実力をつけていったから、決して運動神経が悪いわけじゃないんだけど、角材にまたがってから踏ん切りがつかなくて何時までたっても飛び出さない。
痺れをきらせた僕らは、カウントダウンをしてから一気に竹ちゃんの背中を押して壁からダイブさせてしまった。
無理やり載せられた竹ちゃんはもうパニック状態で、ターザンロープが一番伸びきった地上高10m位の所でナニを思ったのか手を離してしまった。

僕らが「あっ!!」と思う間もなく、ロープから放り出された竹ちゃんは空を飛び、はるか遠くに茂っている木々の中に吸い込まれていった。

もう、大慌てでみんな崖を飛び降りて、竹ちゃんの消えていったほうに下りだし、大声で竹ちゃんを呼んで探した。
本当に漫画みたいな事って現実に起こるもので、なんと竹ちゃんは茂った木々の中、たぶん杉の木のちょうど中腹のあたりに必死にしがみついていて、腕やら足やら擦り傷だらけで自力でなんとか降りてきたんだ。

今になれば笑い話だけど、一歩間違えてロープが慣性の法則で戻り始めてから飛び降りちゃっていたら、きっと竹ちゃんは地面にたたきつけられていたんだと思うとゾッとする。

それから間もなく、ターザンは本当に気心知れた仲間だけの秘密基地になった。


スタンドバイミーのゴーディーやクリス達が死体探しの冒険に出た頃、僕らは僕らなりの冒険をしていた。
ちょうど、11歳の頃のことだな。


少年にとって真夜中の探検ほど心くすぐるものはない。

背伸びをしたくて親に隠れてお酒を初めて飲んだのもこの頃のこと。
今はもうつぶれてしまったあけぼのパンという駄菓子やが山に向かう途中にあった。
あの頃はみんなトムソーヤーとハックルベリーフィンになりたかったから、親の寝静まった深夜1時、僕らは自転車であけぼのパンに集合した。
小学生の頃のメインメンバーは僕とクニオとイシケンとアサコウの4人。家の監視が厳しくて独り部屋じゃないウチンコは来れる時だけ参加した
僕は2階に自分の部屋があり、こっそりと電気の消えた真っ暗な階段を音を立てないように抜き足差し足忍び足で降りる。
玄関を出てからが実は一苦労で、兄貴や姉貴の自転車のさらに奥のほうにある自分の自転車を音を立てずに出すのに一苦労。
イシケンなんかは二階の窓から隣の家の塀を伝って忍びだしてきていたし、みんないっちょまえにトムソーヤーになっていた。

夜中のサイクリングは本当に楽しかった。
昼間に買ったピーチトゥルーフィズのリキュールカクテルとおつまみをリュックサックに入れて、焚き火を燃やすためのマガジンやジャンプをそれぞれ自転車のカゴにいれ、まずは川原で焚き火パーティー。
バーベキューの跡の真っ黒に焼けた石を積み上げてその真ん中にちぎった雑誌を敷き、火種を起こして細い小枝からだんだん太い枝を投げ入れ、炎はだんだんと大きく安定してゆく。

自販機で買ったジュースにリキュールを混ぜてみんなで乾杯!
炎が小さくなるまでくだらない冗談を言い合ったり、川原を駆け回ったり、夏場ならば持参した短パンで泳いだりした。
焚き火に飽きたら、ターザンロープに移動!真夜中の山はいろんな物音がしてなれない頃はみんな本音はドキドキしてるくせに、怖がってると思われたくないから、我先に強がって先頭を行こうとする。
結局ワヤワヤガヤガヤやりながら、コンクリート壁の上に到着。
ターザンをしたり、パチンコで石の上の空き缶を狙ったりして空が白むまで遊んだ。

結局朝の4時、5時頃まで遊んで夜があけきる前に家に帰り着くんだけど、いつも帰って布団に入ってから、髪の毛や洋服についた焚き火の匂いに気づく。
もやんとした焚き火のにおい。
これがまどろみながら記憶にしっかりと刻まれているんだな。

大人になってからも、バーベキューやキャンプで焚き火を起こすたび、この頃の火遊びを思い出す。

基本的にはだいたい土曜日の深夜に家を抜け出すことが多かったんだけど、一度平日の学校がある日に集会したことがあって、そのときは授業中4人とも爆酔して立たされた。

小学5年生の冬頃から始めたこの集会は、中学卒業するまでメンバーを変え遊び場所を変えながら定期的に続いてゆく。


スタンドバイミーって映画自体がもう今の10代の子達は知らないと思うけれど、ダイレクトに12歳位の子達に見てほしい映画だな。
科学が発達して当たり前のように携帯電話で話し、インターネットでいろんな情報を簡単に集められ、リアルなゲームで想像力さえ奪われかねない現代。
決して昔は良かった・・・なんて回顧主義の爺さんみたいなことをいうつもりは無いし、現代には現代の子供のサバイバルな環境ってのがあると思うけど、体を張って生き抜くサバイバルな経験ってのは、大人になってからじゃなかなかできないことだからね。
こんな僕の真似をしてはいけないけど、外で思いっきり遊ぶ楽しさ、遊びを作る楽しさってのは経験していって欲しいなぁと思います。

なんだかうまくまとまらないけど、後半は中学生になってからのお話を書こうとかな。



070504xxx

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